伝説的ジャズトランペッターチェット・ベイカーの半生を描く『ブルーに生まれついて』(2015年製作)

『ブルーに生まれついて』概要

実在した伝説的なジャズ・トランペット奏者チェット・ベイカー(Chet Baker)の半生を描いた伝記ドラマ。1960年代、薬物依存によってキャリアを失いかけたチェットは、暴漢に襲われて前歯を折り、トランペットを再び演奏することが難しくなる。

絶望の中、恋人ジェーンの支えを受け、リハビリと再起を目指すベイカーは、音楽への情熱と自己破壊的な衝動の間で揺れ動く。彼の過去の栄光と影を追いかけながら、再び音楽の舞台に戻ろうとする姿を描く本作は、ベイカーの孤独や脆さを繊細に映し出し、彼の音楽への愛と苦悩を中心に据えている。

主演は『ビフォア・サンライズ』や『いまを生きる』など数々の作品に出演しているイーサン・ホーク。

『ブルーに生まれついて』感想

チェット・ベイカーについての映画ということで惹かれて観た。星野源のエッセイ、たしか『働く男』で、このトランペット奏者が紹介されていて聴いてみると、哀愁漂うかすれた声と、途切れとぎれに聴こえるトランペットのサウンドが妙に良くて、1950年代に活躍したことも相まってか一瞬で好きになった。バーで流れていたら最高だろうなとも思った。地下か雑居ビルに入っているバーで。

本作ではどれほどストーリーが脚色されているか分からないけれど、音楽も楽しめる作品で、観ていて飽きなかった。退廃的な雰囲気もまた良かった。夜、お酒を飲みながらでも、観てみてほしい。

チェット・ベイカーについて

チェット・ベイカー(Chet Baker)は、アメリカ出身のジャズ・トランペット奏者兼シンガー。1929年にオクラホマ州で生まれ、音楽一家で育つ。1950年代にチャーリー・パーカーのバンドやジェリー・マリガンとの共演で頭角を現し、代表曲『My Funny Valentine』で一躍人気に。

1954年のアルバム『Chet Baker Sings』では、その中性的で繊細な歌声も注目を集めた。クール・ジャズを代表する存在として人気を博すが、薬物依存によりたびたび活動が中断。1960年代以降は活動拠点をヨーロッパに移し、1980年代には復活を遂げる。晩年は内省的な演奏スタイルに変化し、多くの名演を残した。1988年、オランダ・アムステルダムで転落死。ジャズ史における孤高の存在として、今も多くの人々に愛されている。

チェット・ベイカーの作品