朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』感想

朝井リョウの『イン・ザ・メガチャーチ』を読んだ。本屋で目立つところに置かれていて、第9回未来屋小説大賞を取ったようで話題になっている小説。もともと朝井リョウの小説・エッセイが好きなので、読んでみた。今回はその感想をしたためる。

『イン・ザ・メガチャーチ』感想(ネタバレあり)

本作では、「推し活」をテーマに、3人の登場人物の物語が繰り広げられる。私は「推し」と言える存在がおらず、また誰かを布教させようともしておらず、登場人物の誰にも共感できなかった。最初はそのせいで読み進めるのに時間がかかったけれど、だんだんと推し活にはまる人の気持ちが理解できる気がして、楽しくなった。

登場人物のひとりに武藤澄香という大学生がいる。彼女は次第に推し活にのめり込むようになり、離れて暮らす父親に「留学の準備費用に〇〇万円必要」と嘘をついて費用を捻出するほどになる。また、もうひとり契約社員として働く隈川絢子は、もともと推しているアイドルがいた。同じ会社にも一緒のアイドルを推す仲間がおり、自宅で一緒にテレビで鑑賞するほどになっていた。

彼らが推し活にハマっている・ハマる様子が、心情とともに描かれるため、私がずっと疑問に思っていた「なぜ少なくない金額を投じるほどハマるのか」「なぜ決して付き合う・結婚はできないのに、推し続けるのか」「虚しくないのか」が紐解けた気がした。

アイドルなど特定の推しがいると、仕事を頑張れるとか、同じ推し仲間との結束力が上がって仲間意識が生まれるとか、それゆえに自身の存在意義を感じられるようになるのだと思う。そう思うと、推しがいるのは良いことかもしれない。

私は推しはいないと言いつつも、好きな友だちや家族、恋人などを思ってプレゼントを買うときは、幸せだなと感じられる。本作で描かれる推し活をしている人たちが、存在意義を感じたり、仕事を頑張れたりすることに近いと思う。