朝井リョウの『生殖記』を読んだ。朝井リョウの作品は『正欲』『イン・ザ・メガチャーチ』『世にも奇妙な君物語』などを読んでいる。いずれも好きだが、中でもこの『生殖記』が、今の私には一番刺さっている。
『生殖記』あらすじ
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。体組成計を買うため——ではなく、寿命を効率よく消費するために。この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
引用元:小学館
『生殖記』感想
まずはひとこと、良かった。タイトルから想像していたのは、ちょっと卑猥なストーリー。けれど、そんなことはほとんどなかった。
語り手は、「尚成(しょうせい)」という、家電メーカーに10年ほど勤める33歳の男性に付いている生殖器。この説明では、意味が分からないですね。ひとまず、語り手については置いておく。
尚成は会社では最低限の働きだけして、余計な仕事は増やさないように努めている。できるだけ省エネで働こうとしている、というのが分かりやすいかもしれない。ときどき斜に構えてものごとを捉えるが、その様子が語られるのでは尚成からではなく、尚成についている主人公。そのためか、「こいつ、斜に構えてるなあ」という嫌な感じがせず、むしろ清々しさを感じた。
また「〜な人だ」と言うときに、「人」ではなく「個体」という表現を使うのも特徴。どう言うか難しいが、無機質な感じがして、一歩引いた目で見られる気がした。
いくつか、尚成(についている主人公)の視点で語られる、好きな意見があるので、紹介してみる。
「企業という共同体の拡大、発展、成長にまつわる話」が好きな個体が話をしているとき、尚成は(こういうときって何の話をすれば丁度よく時間が経ってくれるんだろうなあ)と思っている。分かる。興味がなく面倒な話だが、きちんと聞いて自分の言葉で返事をしようとするとき、同じことを思っている。適当に「そうなんですね〜」とか「私にはそんな考えないです〜」とか返している。
面白かったのは、この一文。「ちなみに、本気で〝地球のために、できること〟をヒトに問うのならば、回答は一つ。 絶滅です」。たしかに。人がたくさん伐採をして建物を建て、車・自動車・飛行機・電車など、大量のエネルギーを使いガスを排出している。先の一文は、SDGsに関する取り組みについての話をしているときに出てきた文だと記憶しているが、たしかにSDGsに関連して地球のためにできることは、ヒトがいなくなることかもしれない。