イギリスの雰囲気溢れる切ない恋愛映画『つぐない』

観て良かった。その一言に尽きる。 2007年製作のイギリス映画『つぐない』(原題『
Atonement』)。

『つぐない』内容

恋愛映画であり、戦争映画でもある。

1935年、イギリス。上流階級のタリス家には、セシーリアとブライオニー姉妹と、使用人の息子ロビーがいた。ある夏の日、セシーリアとロビーはお互いを愛していると気づく。しかし妹ブライオニーが2人のとあるシーンを目撃し、そこから生まれた嘘によって2人は引き離されることとなる。

4年後、戦禍の中、ロビーは兵士となりフランスで戦っていた。出征前にセシーリアと偶然再会。「次の夏には一緒にドーバーの海辺のコテージへ行こう」と約束をして別れる。しかし戦況が悪くなり…。

『つぐない』感想

ネタバレなしで感想を述べると、非常に切ないストーリーだった。「切ない」と一言で言ってもいろいろな感情があるが、本作ではやるせなさと悔しさ、願いのような感情が入り混じった。最後のワンシーンが本当だったら良いのにという願い。

冒頭、舞台となるタリス家のインテリアが美しく、映像美に釘付けになった。イギリスの家らしく、細かい花柄の壁紙やハリーポッターの映画を彷彿させる重厚な柱などがあり、またセシーリアとブライオニーが着ている服からも、タリス家が上流階級であると分かる。セシーリアの気品と色気を兼ね備えたキャラクターと、ロビーの危なっかしく不器用だけれど一途にセシーリアを想う気持ちに引き込まれた。

セシーリアとロビーを見ていると、これほど愛し合える人がいることが羨ましいとも思った。

以下、ネタバレ注意

本作は、ブライオニーがついたひとつの嘘によってロビーの人生を悪い方向へ変えてしまい、取り返しが付かなくなってしまったことに罪の意識を持ち、一生をかけてつぐなうというというストーリー。

ブライオニーが年老いてから書いた自伝を映像で映し出している、という体裁のストーリーだが、その自伝に偽のエピソードが2箇所混じっている。その2箇所が、どうか本当であってほしいと思った。

ひとつは成長したブライオニーがセシーリアのアパートを訪ね、そこにロビーもいたシーン。まだ戦時下という設定なのか、ロビーとセシーリアは束の間しか一緒にいられない。セシーリアもロビーも、ブライオニーが嘘の証言をしたと知っており、すでに嫌っている。ロビーにいたっては、ブライオニーに「みんなに白杖しろ!」と苛立って詰め寄る。ブライオニーが彼らのもとを離れたあと、セシーリアとロビーは静かに抱き合う。

ふたつめは、セシーリアとロビーが一緒に行こうと約束していた「ドーバーの海辺のコテージ」へ行き、波打ち際でじゃれあうシーン。私は偶然にもこの場所、イングランド南部にあるセブンシスターズへ行ったことがある。青い海と白い崖、そして植物の緑が目の前に広がる、とても綺麗な場所。どうかセシーリアとロビーも、この美しい場所で2人の時間を過ごしてほしかった。

イングランド南部にある「セブンシスターズ」

作中何度もセシーリアがロビーに対して 言う、“Come back to me.(私のもとに帰ってきて)”というフレーズも耳に残る。