『ドゥ・ザ・ライト・シング』あらすじ
スパイク・リー監督による社会的メッセージの強い映画で、ブルックリンの黒人とイタリア系移民が暮らす街を舞台に、暑い夏の日に人種間の緊張が高まる様子を描いている。主人公のムーキーはピザ店で働く黒人青年で、店のオーナーであるイタリア系のサルやその息子たちと共に日々を過ごしている。
店の「イタリア系著名人の写真のみを飾る壁」が問題となり、黒人コミュニティの不満が爆発。暑さと人種差別が絡み合い、小さな不満が大きな衝突に発展していく。やがて、ある事件をきっかけに暴動が発生し、ムーキー自身も葛藤の末、過激な行動に出る。この作品は、暴力や怒りを通じて人種問題に対する深い問いを投げかけ、社会正義や個人の道徳的選択の難しさを浮き彫りにするものとなっている。
『ドゥ・ザ・ライト・シング』感想
人種問題を鋭くえぐる作品を世に出してきたスパイク・リー監督による社会派映画。ニューヨークのブルックリンにある黒人街を舞台に、そこで暮らす人々の日常を描きながら、アメリカ社会が抱える人種問題が浮き彫りにされている。
映画後半までは、多少のいざこざがありつつも、ゆったりとした日常生活が繰り広げられるが、ラスト20分が怒涛。人種問題が浮き彫りの衝撃的な内容と展開が襲いかかってくる。2020年にアメリカ・ミネソタ州で起きたジョージフロイドさん殺人事件をきっかけに声高に叫ばれるようになった”Black Lives Matter”にも通ずる内容。
作中で流れるキング牧師とマルコムXの言葉が刺さる人もいるのではないでしょうか。2人は、主に1950年代から1960年代にかけてアメリカで起こった公民権運動での代表的な指導者。キング牧師はViolence(暴力)では何も解決できないと訴えた一方、マルコムXは自己防衛のためならViolence(暴力)を行使することも辞さないと主張した。2人とも違う方法を取りながら、黒人の地位向上を目指した点では共通している。
アメリカにおける人種問題に興味がある人にぜひ観てほしい。社会派映画といっても終盤までは穏やかな日常が繰り広げられているので、テーマのわりに気軽に観られる作品。