『マローボーン家の掟』BADだけどバッドエンドじゃない

『マローボーン家の掟』あらすじ

海辺の森にひっそりと建つ大きな屋敷に暮らすマローボーン家の4人の兄妹は、外界から身を隠すように、奇妙な従い生活していた。過去の忌まわしい出来事から逃れ、屋敷で新たな生活を始めようとする彼らだったが、心優しい母の死や、凶悪な父を殺した過去が影を落とす。屋根裏からの不気味な音や鏡に映る怪しい影に怯えながら、掟の安定も次第に崩れていく。長男ジャックは、追い詰められる中で、最愛の妹と弟たちを守るため、ある決断を下すことになる。(原題『Marrowbone』)

『マローボーン家の掟』感想

冒頭で「いったいこの家族に何があったのか」とすごく気になった。

母親と4人の兄妹が母親が生まれ育った家に帰ってきたとき、2階へ登る階段で母は「線を越えたら思い出は消え、私たちの物語はここから始まるの」語った。まだ幼い末っ子が「あいつは来ない?」と聞く。「誰? 線を越えたから、忘れちゃったわ」と母が答える。兄妹はみな神妙な面持ちで、ひとりひとり線を越える。その背景については何も語られないまま、物語が進んでいく。

母はまもなく亡くなってしまうが、兄妹4人での穏やかな生活がつづく。途中で知り合った女の子アリーを交え、遊ぶこともあった。観ているととても平和で、和やかで、微笑ましい気持ちになった。特に、海辺で4人兄妹とアリーが一緒に足跡を追いかけたり、石を投げて遊んだり、おんぶをしてかけっこをしたりしたシーンが、強く印象に残っている。アリーに兄妹の写真を撮ってもらった場面は、もしかすると一番幸せな瞬間だったかもしれない。

しかしラスト、衝撃の展開が待ち受けている。とても悲しい気持ちになると同時に、起こったことは間違いなくBADだが、エンディングとしては100%のバッドエンドとは言えないかなと思った。悲しい現実の中で夢を見ているほうが幸せなら、それが正しいんだろうなと感じた。